日本型ダーチャと生活安全保障

二拠点生活の場を確保して庭で飲用水、電気、食糧、燃料、かまどを、場合によっては耐空爆塹壕(anti-air raid trench)を作ります。

自分で作る電気

Ⅳ 自前の電気を用意する ―独立型太陽光発電 ―

 

はじめに 

外国から侵攻を受け、長期間地下室などに隠れて空爆、銃・砲撃を凌いだウクライナ

の人が「電気も水も食料もない」と嘆いているニュースを見ました。

確かにシェルターや地下室で砲撃・空爆を何とか凌いだとしても多くの場合、周囲の水道、電気、ガスといったインフラも破壊されており、これらについての補充・代替策が講じられないと生きていけません。

 昨今の日本では、ソロキャンプや車中泊が流行り、また絶え間なく発生する災害対策としての機能も持つレジャー・キャンプ用品も増えてはいます。しかし、それらは2泊3日、3泊4日程度の生活を前提としており一月、三月と長引くオフライン生活を前提とするものではありません。ウクライナではすでに7か月を超えています。

 本書ではもっと長く年単位でのオフライン生活が可能となるよう、飲用水に引き続いて電気についてサステイナブルな方策を講じていきます。

 

その前に太陽光発電一般について

私は商用電力と連系する(売買電)太陽光発電は自宅で行って20年、連系せずバッテリーに蓄電して行う独立型太陽光発電は始めて40年近くになります。

 

1 先ずは太陽光発電一般について気になる点から

 一般家庭で5kwほどの連系型太陽光発電を行っていて「売買電で十分黒字になっている。だから太陽光発電だけで日本の電力を賄えるはずだ」というコメンテーターがいます。確かに5kwほどの発電能力があれば多くの家庭では売電と買電の収支バランスはとれるでしょう。

 しかしそれは発電しないあるいは足りない夜間、雨天時は商用電力をバッテリー(蓄電池)として使っているからです。火力あるいは原発による発電所を前提としての立論です。夜間、雨天時も電力会社とは無縁に=自前の蓄電池で賄おうとすると相当高額な費用を必要とします。かっては400万とか500万円とかしました。蓄電容量を発電の一部にとどめるにしても50万円は見ておく必要があるようです。

 産業用電力を賄うにはこの比ではありません。

 

2 商用電力が使えないところで電気を作りながら使用するにはバッテリーが不可欠な要素となる独立型太陽光発電を行うことになります。

 小屋暮らしをしてオフグリッドの自給自足的生活を送りたいという人はたいてい当初は太陽光発電で需要を賄いますが、見ているとそのうちに電柱を立て商用電力を引っ張り込みます。

 すぐバッテリーがなくなる、使えない電気器具が多いというのが主な理由です。

 次のように分析、助言させていただきます。

・電気製品は起動時に高電流が流れます。ほとんどすべての電気製品を使いたいのであれば直流を交流に変換するインバータはサイン波(正弦波)1500Wのものにすべきです。車内でAC電源を使えるハイブリッドカーやEV・PHV車も増えていますが1500W出力を基本にしています。

・出力が1500Wものインバータは無負荷でも待機消費電流が多いのではないか、見合う太陽電池は大規模になってその用意が大変になるのではないか、との疑問が出てきそうですが、そうとも言えません。

 電気製品を使わないときはOFFにしておけばよいのです。消費電力が微弱な電気製品用には別にそれ相応の安価なインバータを用意すれば足ります。コンビニにも並んでいます。

どの程度のインバータを稼働できるかは太陽電池パネルとの関連ではなくバッテリーとの関連で決まります。

大消費電流を伴う製品でも、例えば家を建てるのに使う1000Wの丸鋸でも使 うのは週末の短時間15分というのが実際でしょう。ならば週5日は貯金に励み、1~2日のみ消費を楽しむという生活にもっていけばよいのです。

朝から晩までクーラーをつけっぱなしという生活スタイルを好む人には向きません。

写真のモバイルハウスでは200Wパネル2枚=400W、バッテリー2個=並列にして24V×100Ahとし(蓄電容量2400Wh)、これに1500Wインバータをつけるだけですが家一軒建てるのに必要なすべての大工道具の電力をまかなえます。

          

         

 

      

・問題なのはバッテリーです。

太陽電池パネルは50Wで5万円したものが今や3万円で200Wのものが買えます。1500Wクラスインバーターも私が購入したときは8~9万円したものがいまや2万数千円で購入できます。

太陽電池パネルは20年以上持つので、購入コストで支障となる度合いはかなり低下しています。多く入手して使わないパネルを倉庫にしまっているだけという人も少なくありません。

しかしバッテリーは重量ある生もので使用可能期間もさほど長くはなく、値段も張るなど悩みの種です。電気自動車におけるバッテリーと根本的に同じ悩みを抱えています。

<バッテリーの選択>

 

1)販売店(アウトドア用品や車中泊用品を扱うお店)はボートなどマリンレジャーを主目的とする20時間率100Ah~115Ah、重量25㎏前後のメンテナンスフリーバッテリー(鉛)を扱うところが多いようです。

その理由は、①バッテリー液を補充する必要のないこと ②価格、重量ともほどほどであり、お店としても売りやすく勧めやすいからでしょう。

しかし、ディープサイクルバッテリーとはうたっているものの実態はセミディープサイクルバッテリーで(仕様数値から判断できます)、可能サイクル数はそんなに多くはなく突然死することも見られます。小屋暮らしの人が太陽光発電生活をやめる要因にもなっています。

2)このところ太陽光発電用品を専門にするお店や前記アウトドアグッヅを扱うショップでも一部扱い始めているのが他のリチウムイオン電池より相対的に安価で安全度が高いとされるリン酸鉄リチウムイオンバッテリーです。

 リチウムイオンバッテリーはエネルギー密度が高く一般的な鉛電池に比べ、重量、容積とも半分ほどで済みます。ただし、まだ価格は高く、出回っているリン酸鉄リチウムイオンバッテリーはほとんどが中国製のようですが実績のある販売店が売っているメーカー名のはっきりしているものだと12v、100Ahタイプで13万円、同150Ahで20万円ほどします。メーカー名不詳のネット販売の安いものでも200Ahタイプで8万円を越えます。

後述のポータブル電源も、ポータブル電源自体のメーカー名ははっきりしていますが(多くは中国製)、そこに内在するバッテリーメーカーは不詳のようです。

 リチウムイオンバッテリーはBMS(バランスマネイジメントシステム)という基盤が内蔵されているから安全というのが謳い文句ですが、取り扱いに注意が必要だからわざわざ個別に基盤を入れているのであり、直列、並列の組み方等ラフな扱いをしがちなアマチュア、非常時下の使用に向いているのかどうかわかりません。

 トヨタ車でも最近では新型「アクア」や「クラウン」の駆動用バッテリーにリチウムイオン電池のほかに新開発のバイポーラ型ニッケル水素電池を搭載するものも出てきており、リチウムイオン電池にあらずんばバッテリーにあらずとは言えない状況です。

3)私が使っているのはEB電池というフォークリフトやゴルフカーなど電動車に使われている充電⇒使用(放電)⇒充電という正にサイクルユース用のディープサイクルバッテリー(鉛)です。

 理由は低価格の実力派だからです。

EBバッテリーを販売する主なメーカーにGS・YUASA、 G&YU、日立化成などがあります。(ただし近時、日立ブランドはタイ国のブランドに変わっています。)

特徴は液式(バッテリー液補充を要する)、重い(EB100で34キロ位)、安価(5時間率100Ah規格で2~4万円)、タフであることです。私の場合2011年に購入した日立のものが10年たってまだ使えています。移動ではなく据置使用、液の補充を苦痛としない方なら選択肢に入れてよいと考えます。

 EB100バッテリー6個を並列使用して12Vシステムで使うなら蓄電容量は

  12×100Ah×6で7200Whとなります。

            

                         

金額で22000円×6で13万円位となります。今回発売のiPhone14×1台分ですね。

このシステムがあれば全く電気が来ていないところでも家1軒建てられます。

4)<一般的な鉛電池使用について>

有事の場合を考えると、そこらへんに駐車している無限の数の自動車12V鉛バッテリーはほぼそのまま活用できる点は有利となります。福島原発電源喪失の時そういう動きもあったと聞いています。

現行の鉛バッテリーがいかにも環境に悪いかのように印象付ける傾向がありますが同バッテリーは100%業者に回収され、部品の再利用がされています。

 (2022年9月、10年使ったEB100バッテリ2個が単価1キロ45×69キロ、約3000円で中国系企業に引き取ってもらえました。)

レジ袋はよくないと言いながらコロナワクチンの注射器をプラスチックからガラスに替えるべきという方はいないことを考え合わせてもよいのでは?

 

ポータブル電源のこと

 最近、ポータブル電源というリチウムイオン電池を内蔵した小ぶりな電源ボックスが災害対策、アウトドアレジャー用品としてはやり始めています(リン酸鉄リチウムイオンバッテリーが大半のもようです)。持ち運びが便利で電気工作やDIYは苦手という人も方もこれなら使えるでしょう。塹壕その他の避難先での携行型電源として便利です。

 1000Whのものならかなり使えるでしょう。これを使ったユーチューブのなんと多いこと!

                        

                                 

ただし基本はAC充電ですので家で充電して車中泊で1~2泊使うといった使い方になります。AC充電ができない移動中であれば太陽電池を外付けして節電しながらの使用ということになります。

 なお、一般論ですがカタログ上の蓄電容量から割り算して○○Wの電気製品なら何時間使える、といったコマーシャルが多くみられますが、バッテリーのためには急速充電と共に高い放電電流も避けるべきです。

100A取れるバッテリーでも全部(1C)ではなく0.5C程度にすべきです。12Vシステムで1000Wの電気製品を使うと1000÷12=80A以上の電流が流れてしまいます。100A取れるバッテリー1個では0.8C以上となり、バッテリーのためによくありません。1000Wの電気製品を使いたいならバッテリーは少なくも200Aのものにするかあるいはそんな器具はバッテリーに向かないと止めるのが筋かなと思います。

注)24vシステムなら流れる電流値は半分で済みます。こういうこともあってドイツ車では48V仕様の電源にしているものもあらわれています。

 ユーチューブで多く見られる車中泊でのポータブル電源の使い方で邪道という感じがするものがすくなくない気がします。車の中で冷房、電子レンジ、ホットプレートなんて大金持ちのクルーザーヨットのよう。自然と一体に、ではなく自然に都会の生活を無理やり持ってくるような。なんのためのアウトドアなんでしょう。