日本型ダーチャと生活安全保障

二拠点生活の場を確保して庭で飲用水、電気、食糧、燃料、かまどを、場合によっては耐空爆塹壕(anti-air raid trench)を作ります。

自分で作る飲用水

Ⅲ 自分で作る飲用水➡雨水飲用水化

ー 水道水を利用できないときの恒常的飲用水確保策 ―

 

はじめに

日本の水道水は安全でそのまま飲めると誇らしげに語られます。

では、もし、テロ・戦争など意図的な攻撃で浄水場施設が破壊され、水道水が利用出来なくなったらどうしますか。

そんなことが起きるはずはない、ではなく起き得ることはウクライナ戦争ではっきりしてしまいました。日本でも戦争ではなく原発事故で似たような目にあっています。

2011年3月11日、原発事故後東京圏の飲用水の取水源となる河川の上流に放射性物質を含んだ雨が降り注ぎ、11日後の3月22日、その水を水源とする東京金町浄水場で放射性ヨウ素が検出され(1Lあたり210ベクレル)、浄水場が機能を停止してしまいました。

金町浄水場も千葉県側の栗山浄水場も「男はつらいよ」「野菊の墓」の舞台地であり、よく知っている場所だけにショックを受けました。まだマスコミもそれほど騒いでおらず、念のためペットボトルでも買っておくかとあたりのお店に赴きましたが、どこも空っぽ。これまでの人生で一度も足を踏み入れたことのないほこりが積もっているような辺鄙な場所のうらぶれたお店に行ってもありませんでした。

究極ともいえるような危機について人はマスコミが騒がなくても動物的な感で察知でき、買い占めに走ったようです。オイルショック時のトイレットペーパー不足どころではない静かでぞっとするような雰囲気でした。

 

さて、浄水場からの水道水がストップしたらどうしますか。

飲用可の井戸水や沢水が身近にあって利用できる人は幸いです。問題はそれができない人です。お店に買いに行ってもペットボトル入り飲料水は売り切れでしょう。水道局浄水場の非常用に備えるストックも、自衛隊の出動もあまりに求める人が多く、浄水場の機能停止が長くなるにつれ対応できなくなります。

侵攻を受け、長い期間身を潜めているウクライナの人が「食料も水も電気もない」と話している光景を忘れることはできません。

 

私としては雨水利用をお勧めします。雨水は本来、蒸留水に近いきれいな水なので集水面、送水パイプ、貯水容器、給水蛇口の衛生状況に注意しながら後に述べる適正なろ過を加えることで飲用にすることができるからです。

注)浅井戸や日本の40数パーセント(70%を超えるとの説もあります)の水道水が原水として頼っている河川水はほとんどがそのままでは飲めません。大都市浄水場の水も最終的に飲用可までに達するのは「高度浄水処理」と薬品(水道法により蛇口段階で一定レベル以上の残留塩素があることが必要とされている)に依ってのことです。

 

 

当初考えたのは*①<第1の手法>です。これは特許を獲れるかもしれませんが、電気、水中ポンプ、電子回路まで必要とし、”有事の場合にだれでもできる簡素な方法で“、とする要請にあいません。また、非開放容器内での砂ろ過によっても生物ろ過がなされることは肯定されていますが、砂・砂利層の容積、水温の変化でどの程度の影響を受けるか不明確です。少なくも自分以外の人に飲んでもらうためには高額な費用(1回1万円前後)が掛かる水質検査が必要となり、目的に合わない気がします。

 

*<第1の手法>

閉鎖的雨水貯水タンク内で

①   底の水を水中ポンプで砂利の詰まったステンレスざる内を上昇させる=<間欠式空気揚水筒と言い水槽内飼育魚のろ過でも用いられる。生物ろ過作用も生じている。>

②    タンク内上部に上昇した水を3つのステンレス網に分けて落水させ=<ここで空気に触れさせ、ばっ気効果の向上を図る。>                     

③   3つのステンレスざるで網内ろ過材に応じたろ過、すなわち 砂利ざる=生物ろ

過、粒状活性炭=吸着作用によるろ過、ゼオライト放射能対策効果の期待がそれです。

これらを太陽光発電による電気を用い、挿入した電子基板の回路により短時間周期で間欠的に作動させるというものです。

活性炭だけでは除去できない細菌を砂ろ過(生物ろ過)によろうというものです。今現在も稼働していますが確かに水はきれいだし容器内に苔・藻、スライム(ぬめり)が発生することもないなど絶えず水は活きている感じがします。

 

井戸水などで古くから行われていた素朴なろ過は棕櫚、小砂利などを使うものです。その後、水系疾患の多発や衛生知識の向上もあり、煮沸や薬品の使用は別として活性炭を使う人が増えてきました。今でもDIYでろ過を考える方はほぼこれに依拠しているようです。

しかし砂や砂利を使ってもそこに絶え間のない水とその流れがなく普段はカラカラの状態では「緩速ろ過」的な生物ろ過効果を望むのは無理です。また活性炭は量にもよりますが浄水にかなりの効果があるものの細菌の分解・除去まで行えるものではありません。

<膜ろ過>

 水処理の産業界では「砂ろ過で取り除けない細かい濁質は膜を使って取り除く」とされていますが、結論から言って私も費用、装置、技術的困難度、特に有事における特殊状況を考えると粒状活性炭+膜ろ過が目的にかなうと考えます。

膜ろ過とは膜の孔の大きさでふるい分ける「ふるい作用」によるものです。微生物を使う生物ろ過よりずっと安定し、かつ小型化ができ、この点でも有事向きでしょう。

ろ過に使う膜には精密ろ過膜(MF膜)、限外ろ過膜(UF膜)、海水の真水化に使われる逆浸透膜(RO膜)があります。後者ほど孔が小さくなり、より微細な物質を阻害できますが圧力や電力を要するなどで使用のハードルは高くなります。

精密ろ過膜(MF膜)は圧力なしに(位置エネルギーを使用)おおむね0.1㎛以上の物質の通過を阻止できるのでウイルスは無理としても細菌は阻止されることになり、個人で用いる浄水装置として妥当と考えます。災害緊急ろ過器にも使われています。

中空糸膜

精密ろ過膜(MF膜)として多く使われているのが中空糸膜(ちゅうくうしまく)といわれるもので家庭用浄水器の多くはこれを用いていますがその歴史は古くはありません。

注)クリンスイの家庭用浄水器総合カタログに次のような記載があります。

活性炭での浄水が一般的だった1984年、私たちは中空糸膜フィルターを採用した世界初の浄水器クリンスイ」を発売しました。

総販売元三菱ケミカルクリンスイ

<市販の家庭用浄水器を使う場合の選択>

さて、市販の家庭用浄水器といっても蛇口直結型、ポット型、ビルトイン型などいろいろあり、この中でどれを使ったらよいかですが、水道水だけを前提にするのではなく雨水、井戸水、河川水など細菌の混入の恐れのある原水の浄化をも考えるので活性炭と中空糸膜双方で構成されるカートリッジを組み込んだもの、そしてろ材の量、ろ過に使う時間に余裕のとれるポット型が望ましいと考えます。

雨水利用で有名な墨田区雨水市民の会*クリンスイの家庭用浄水器に使われる浄水カートリッジ(cpc5w-nw)を用いて家族が使用後のお風呂の残り湯でろ過実験を行い、その結果を公開しています。大変有意義、有益なので閲読をお勧めします。

            

*     雨水市民の会 (skywater.jp)

同会は現役・OBの保健所職員も多く、その科学性は高く、私も所属の研修講師にお招きしたことがあります。

<私の方法>

活性炭の量を増やしたいこと、そして活性炭の有機物堆積によるつまりでろ過カートリッジ全体を頻繁に交換するのはもったいないと考え、活性炭と中空糸膜の濾過槽を分離することにしました。

注)粒状活性炭の価格は1㎏(2L)が送料込み2000円程度で購入できます。

 

問題は中空糸膜をどう調達し、どう中空糸膜濾過槽と連結させるかです。ここで助かったのが「携帯用浄水器」と呼ばれる中空糸膜をろ材とするアウトドア用品が最近ではかなり出てきていることです。登山その他冒険先で現地の水をろ過して口に入れるもので携帯に適する大きさ・形態です。価格も3千円位から入手できます。

下の写真左の2個です。右は前記の活性炭と中空糸膜の濾過槽双方が組み込まれているカートリッジ(cpc5w-nw)

 

選んだ「携帯用浄水器」A及びBは上の注入口に原水を入れ、下の吐出口を口に含んで浄水を飲むというものです。ただし上側の原水注入口はペットボトルの首を直接連結させることができるので井戸、川、雨水を入れたペットボトルを連結させ、チューブ、ホース類を介在させることなく浄化することができます。

携帯浄水器を複数の者で利用したいとき、予備的に多量の浄水をためておきたいというときは吐出口にチューブをつけて他の容器に連結させることで対応できます。

吐出口にもペットボトルと直接接続できるようにした製品(写真A)もあるので使い方によっては便利でしょう。

 

ペットボトルの水を原水とする場合あるいは浄水をペットボトルに溜める場合、かなりの縦長になり手で持っていないと転倒してしまい面倒です。

そこで以前、別著で製作紹介した「ろ過柱」を修正したオリジナルなものを作りました。

       

 

これによるろ過の流れの概念は次のようになります。

原水(雨水)を (第一濾過槽=ペットボトルの底を切ったもの)に注水

       

⇒第1濾過槽

・最上部にセットしたステンレスの味噌こし器(ざる類)で粗ろか

 内のろ材は自由選択

・粒状活性炭によるろ過(これがろ材第一の要素)

・第2濾過槽への連結部に活性炭の漏出を避けるためにろ過ウールを充填

⇒第2濾過槽=市販のアウトドア用携帯浄水器 内蔵の中空糸膜で細菌をブロック

⇒浄水貯水容器

浄水後の水をペットボトルや水保存タンク