自分で作る防空塹壕② 耐空爆用屋根(天板)の構築
3 屋根(天井)部分について
地上あるいは空中からの銃・砲撃、爆撃に一定の抵抗力を持つには塹壕にも屋根
(天井)部分を準備して一部でも地下室化し、防空壕の意味を持たせることが必要です。
私は次のようにしました。
普段は空堀を渡る橋(鉄筋コンクリート)として設置しておき、空襲時にはその下に
待機できるようにするのです。
(1) 製作のポイント
一人かつ機械は使わないという前提で次のようにしました。これがうまくいかないと「防空型」とならないだけに成功してささやかな幸せ感を味わうことができました。
① 屋根にする部材を丸太ではなくコンクリートにしたこと
何人かの屈強な男性がトラックから太い丸太をおろして塹壕の上に並べていくウ
クライナの映像を見ましたが一件素朴に見えるその方法はとりませんでした。
チェーンソーを使って伐採→トラックに積み 運んで 降ろすということで機械、
トラック、複数の人が必要になるからです。どこでも手に入るセメントは25キロ、
砂利、砂とも大袋で20キロです。一人で運べます。道具はシャベルとセメント等を
混ぜる容器(タフブネ)があれば足ります。
② 重機なし、人力一人という最低の条件で作れるよう、塹壕(空堀)の上にできた
ものを運ぶのではなく型枠をセットし、その中に鉄筋、コンクリートを注入すると
いう方法を考えました。重くなったものを後から動かすことは不可能だからです。
③ 橋の幅は広いほど有効性が増しますが、作るのに手間がかかります。1日で作り
終えず中断して後日付け足すのでは強度が損なわれます。そこで幅の狭いものを製
作完結させ、後日脇に付け足し増設するようにしました。
はじめに作ってあったのは幅30センチの橋(№1)で、後にこれと隣り合わせに
50cm幅、の橋を付け加え(№2)、その後さらに60cm幅の鋼板入り鉄筋コンクリ
ート橋を付け加え(№3)て計140㎝幅の通路兼少人数(1~3人)用防空屋根としまし
た。
さらに横に並列させていけばより多くの人数を収容できることになります。
④ 長さは堀の幅と関係してきます。コンクリート+土砂の重量を下で支えるのは塹
壕両岸の土の部分です。短い幅では支えきれずに土砂崩壊の恐れもあるので余裕を
持った長にすべきです。例えば堀の幅が70㎝なら両側それぞれ40㎝で橋を支え
るよう計150㎝の長さにするなど。
2003年に掘削した幅45センチの空堀は19年の経年変化で幅が広がり、かつ堀の
上斜めにセットするため3基とも205㎝という長めのものになりました。
(2) 実際の施工手順
天板(屋根)タイプ1
当初、竹の拡散防止の掘割上に橋として製作したもの。厚さ8㎝、幅30cm、長
さ205㎝。鉄筋は10mmの異形丸鋼使用。
天板(屋根)タイプ2
コンクリート打設後は人力で動かせないので12mm合板で作った浅い箱状の型枠
をセットし、そこに鉄筋を並べ、その上にコンクリート打設をする。鉄筋は10m
mと13mm鉄筋を溶接して組んである既製品「立上り筋」3.6mを2mに切断し
てセットした。
天板(屋根)タイプ3
強度アップのため鋼板を入れることも試して①底部に数センチ厚のコンクリー
トを打設してその上に②鋼板③鉄筋④ワイヤメッシュと重ね、これらをメッキ線で
結び、⑤さらにその上に数センチ打設する。
ただし、この鋼板は波板と同じく、重ねられるように両脇が丸くなっているので
凸部を上にするか下にするかで迷う。コンクリート充填にあたって隙間が生じない
のはどちらかを考えて選択するしかない。上にして下のくぼみにはコンクリートを
盛っておき、かつ上部平坦部には鉄筋を緊縛してコンクリートと鋼板の結合強化を
図った。
いずれにせよ神経を使う。タイプ2にして鉄筋の増加(ワイヤメッシュを追加する
など)を図った方が合理的かもしれない。
<参考:一基あたりのコンクリート打設に要する時間>
№2の50cm幅のコンクリート橋を完成させるのにどのくらいの時間がかかるか計測しながら作りました。上部内寸70×43㎝のタフブネで一回に25㎏セメント半袋+20㎏砂利1.2袋+20㎏小粒砂利1.2の混合比率で混ぜ、型枠に注入し、この打設が終わるまで1時間でした。人力ではかなり疲れるので1時間の休憩をはさみながら結局1日4回の作業で終了できました。二人なら1日に2基作れることになります。
コンクリートは5日もあれば乾燥するので危機が切迫した段階で製作にかかっても1週間あれば間に合うことになります。
<防御力アップ>
上の構築物は自動車が乗れる強度を持っているので、掘った土を土嚢に入れてあるいはそのまま載せたり、コンクリート屋根を二重にすることで強度アップができます。